次の記事 前の記事

Column

2023.08.31

『花椿』2023年号 WHAT IS ENERGY? ー 色彩 ー

『花椿』2023年号のテーマは「OUR ENERGY」。身近にある「色」が、私たちに及ぼす影響とはーー。資生堂 みらい開発研究所で色彩を研究している島倉瞳さんにお話しを聞きました。色彩のなかでも「赤」にフォーカスし、エナジーとの関係性について考えてみました。

生命活動を象徴し、 行動を後押ししてくれる「赤」。

 「人類にとって赤は生きていく上で非常に大切な色です」
 と言うのは、資生堂 みらい開発研究所で色彩を研究している島倉瞳さんだ。「もともと人間の目は赤を認識しやすい細胞を持っています。それは、私たちの祖先であるサルの時代から続くもので、樹上で果実の色を見分けたり、体の一部が赤くなる繁殖のサインを見分けたり、火や血という危険なものから逃れたり戦う準備をしたり。もちろん赤にはポジティブなものもネガティブなものも含め多様なイメージがありますが、根源的には生命に直結する色として感じられていました。
 赤は、太陽や血、火に象徴されるように活動的、強さや行動力、情熱や興奮、エネルギーを表す色であり、赤信号や注意書きなどのように危険を知らせる警戒色としての役割も果たす。日本には見え方を表すことばに「明暗顕漠」というものがあります。それぞれに赤黒白青の色を指す。「赤の他人」「赤裸々」ということばにもあるよう、赤は明らかであることや物事を強調する意味でも用いられてきました」
 また、赤には気持ちを奮い立たせるパワーがあるとも言われる。スポーツ選手が試合で赤いウェアなどを身に着けたり、ビジネスシーンで赤いネクタイや靴下を身に着けたり、女性が赤い口紅を塗ったり。相手を威嚇したり、強さを誇示する意味もあるかもしれないが、文化によっては赤い下着を身に着けることで運気が高まるという話もあり、赤は護符のように自分の身を守り、行動を後押ししてくれる色なのだとも言える。
 赤い口紅は女性の魅力を際立たせるとともに、女性の社会進出を後押ししたアイテムでもある。マリリン・モンローに代表されるセクシーなイメージもあるが、1904年、ニューヨークで参政権を巡るデモ行進をした女性たちの口もとも、赤い口紅で彩られていた。資生堂の化粧品で象徴的なのは、やはり1970年代から80年代にかけてエキゾチックな存在感を放った山口小夜子のくっきりと縁取った赤い口紅と、80年代後半に登場した今井美樹のアクティブなイメージの赤い口紅だろう。そして、近年はジェンダーギャップに対するさらなる意識の高まりとともに、再び赤い口紅が流行している。
 いつの時代も、赤は、私たちが生きていくためのエナジーを与えてくれるのだ。

Text / Keiko Kamijo
Illustration / Mayumi Yamase

*本記事は、2023年号に掲載しています。
本誌のご案内はこちら