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Column

2017.07.07

宇宙の神秘と生命と

©Rinko Kawauchi

2013年刊行の『あめつち』以来、約4年ぶりとなる川内倫子さんのオリジナル作品集『Halo』が8月末に発表される。タイトルの『Halo』(聖像などを取り囲む円光、後光)が意味するように、同書には無数の椋(むく)鳥が規則的に、かつ不規則に繰り返す旋回のようすや溶けた鉄くずが壁に打ち付けられ火花となって舞い落ちるさま、銀河系にちりばめられた小さな惑星群のようなスノーダストなど、地球の中にある小さく細やかな像が収められている。

©Rinko Kawauchi

5年ほど前から、イギリスや中国、出雲などで本作品の撮影を重ねてきたという川内さん。「さまざまな場所で撮影しながら、自分がこの地球・宇宙に立っている実感がありました。空の高いところから自分を俯瞰で見るような感覚です。普段はそういうことをあまり意識することは少ないのですが、無数の固体がなにかの規則に沿って動いているさまを見て、宇宙の摂理をみたような気持ちになりました」。

©Rinko Kawauchi

川内さんのことばに表される感覚は写真作品と同時に作成された動画作品によって、より鮮明に実感することができる。前述の溶けた鉄くずの火花とは、中国、河北省で開催されるお祭り「灯樹花」でのふるまいのことで、そこの土地では花火の代わりとしてそのような行いがなされるのだという。液体化した鉄くずが瞬時に固体となり弾け跳ぶさまは鮮烈で、野趣に富んでいる。それらの火花や椋(むく)鳥の群れ、神事の光景などが途切れることなく続いて映し出されるストーリーによって、見る側は自然と、宇宙の中に立つ自分の中へ意識が立ち戻っていくことを感じるはずだ。

POSTでの展示風景。壁に動画作品を投影している

動画作品といくつかの写真作品は、発売に先駆け開催されている写真展で観ることができる。動画作品は代官山の書店POSTにて7月23日(日)まで、写真作品は銀座の森岡書店にて16日(日)まで展示中。宇宙の神秘と人間の生命力を描いた川内倫子さんの新しい世界。それぞれの企画展をとおして、川内さんの新たな視点をより身近に感じてみてほしい。

■『Halo』書籍情報

写真・テキスト:川内倫子

デザイン:ハンス・グレマン

定価:7,800円(税別)

半径:23.0×31.5cm/ハードカバー/ケース付き/表紙タイトル箔押し
発行:HeHe(Apertureとの共同出版)http://hehepress.com/

■写真展情報

(1) 森岡書店

会期:~2017年7月16日(日)

場所:森岡書店(東京都中央区銀座1-28-15 鈴木ビル)

時間:13:00~20:00 ※7月16日は17:00まで、定休月曜

電話:03-3535-5020

(2) POST

会期:~2017年7月23日(日)

場所:POST(東京都渋谷区恵比寿南2-10-3)

時間:12:00~20:00 ※定休月曜

電話:03-3713-8670

Web:http://post-books.info/

■イベント情報

川内倫子写真展 Halo クロージング・トークイベント

川内倫子×濱田祐史×森岡督行(森岡書店)×中島佑介(POST)

日時:7月16日(日)14:00~(受付13:30)

場所:森岡書店(東京都中央区銀座1-28-15 鈴木ビル)

受付:03-3535-5020 ※要予約。電話にて承ります。

参加費:1,500円(写真集『Halo』を森岡書店もしくはPOSTにてご予約の方は参加無料)