昨年掲載した「詩のレッスン#2 『花椿』と詩の深い関係とは」において『花椿』と詩のつながりについてご紹介いたしましたが、#4では、これまでに『花椿』に掲載された、令和のこの時代に読んでも色あせない作品をご紹介いたします。
そもそもなぜ、『花椿』は詩を大切にしているのか?
現代詩花椿賞創設の際に詩人の宗左近さんが語られたことばに、その答えがあります。
―お化粧も詩である、ファッションも詩であるという立場に僕は立ちたいんです。資生堂の仕事というのは、日常にあって日常を超えること。現実を童話の世界に変えること。一種の魔法。だから、詩と同じなんです―
その日その日の気持ちを素直にことばで綴ってみる、大切な人に届くように書いてみる…お化粧やファッションと同じように、ことばも詩も私たちが健やかに美しく、豊かに生きるために必要不可欠なものだと考え、『花椿』は1937年の創刊当初から詩を大切にしてきました。50年代の巻頭の扉には詩と挿画が毎号掲載され、『花椿』と言えば、「詩」というイメージを形づくっていったのです。
過去の『花椿』には、与謝野晶子、茨木のり子、山口洋子など、創刊時から女性の詩人もたくさん寄稿していました。今回ご紹介するのは、詩人で作家の深尾須磨子が、いまからちょうど60年前の復刊1周年記念号に寄せた詩です。
戦後復興真っただなかの日本で、戦時中の休刊を経て復刊した『花椿』と銀座の街へのあたたかな眼差しが感じられる作品で、挿画は資生堂スタイルを確立したと言われている、資生堂意匠部に所属していたイラストレーターでグラフィックデザイナーの山名文夫が描いています。深尾須磨子が書き下ろした作品に、シンプルな線画でありながら未来への希望を感じるイラストが添えられ、清々しい頁となっています。
コロナ禍で、私たちの生活も銀座の街も風景が一変してしまいました。しかし、少しだけ明るい兆しが感じられるようになってきたいま、この詩にあるように、「美を取り返す」ことができる時がきたのではないでしょうか。こんなふうに詩には時代を超えて、人々にエールを送ってくれる、気づきを与えてくれる力があるような気がしています。
そして2021年春夏号の本誌テーマ「Beauty Beyond Baundaries」をテーマに、詩人の三角みづ紀さんに書き下ろしていただいた作品もご紹介します。世界中でさまざまな「分断」や「境界」が生まれてしまっているいま、そっと寄り添うこと、優しく抱きしめ合うことの大切を感じられる作品です。
今年も、ウェブ花椿の連載「今月の詩」の募集をしております。締切りは6月4日(金)17時です。頭に浮かんだことば、心に積もっていることばを、気負わずに、気軽に綴ってみてください。あなたのご応募をお待ちしております。
応募は下記から。
https://form.hanatsubaki.shiseido.com/scp/poem_form/index.php