環境音楽を紹介する連載企画「花椿アンビエント」は、資生堂研究所が主導するオープンイノベーションプログラム「fibona」とのコラボレーション企画としてお送りしています。
「香り」「音楽」「歩く」「体内リズム」「人工冬眠」に続き、#8のテーマは「入浴」です。
伊吹山は、滋賀県と岐阜県の県境にあり、薬草の宝庫と呼ばれています。資生堂は2018年から伊吹山に薬草園を設置しており、原料植物の栽培を行っています。その中で、希少価値の高い薬草でありながら、未利用となっている素材があり、それを薬草湯の入浴用ボタニカル「蘇湯」として開発し、クラウドファンディングすることになりました。近年環境の変化で危機的状況にある伊吹山の自然を蘇らせるプロジェクトでもあります。
今回は「蘇湯」を使用しているときをイメージした音楽をお届けします。合わせてぜひ「蘇湯」のプロジェクトをご支援ください。
- OYU - ind_fris
Artist Comments
ind_fris
入浴について思う。
湯に身を浸す。
ただ身体の汚れを清めるためでなく、とても限定的な時間・空間に身を置くこと。
常に不定形な液体に身を包まれる。
揺らぐ水面、光の屈折。
湯に身を浸す。
じんわりと体温が上がってくるにつれて、頭がぼんやりと静かになり。
身体の内側から何かが湧き上がってくるような、あるいは何かが巻き戻ってゆくような感覚。
静謐であるようで、音に満たされた空間。
流れる、波打つ水の音、換気扇、おのれから湧き上がるため息のような声。
湯に身を浸す。
水という混沌の中に身を委ねる、何かであることや、誰かであることから一時的に解放される。
外気へと身を晒す。
頭の中でサーッと音がしている。
Recommender/H.TAKAHASHI(Kankyō Records)
@kankyo_records
「入浴」というテーマで今回楽曲を制作したのは、愛知県岡崎市を拠点とする電子音楽家ind_fris。さまざまなハード機材を使い何層にも重ねられたレイヤー、エレクトロニクス・ドローンをブレンドしたフローティングなダブ〜アンビエントといった楽曲を制作してきた気鋭の作家です。
『Oyu』と名付けられた本作は、浴室を想起させるリバーブの効いたシンセが空間全体を覆う中、あたたかな質感のベース、大量の水を思わせる環境音、滴る水滴のようなシンセ、鳥の鳴き声のような音、ギターの柔らかな響きなど、様々な要素が加わり、ドローン→アンビエント・ドローン→アンビエント・ダブといった具合に緩やかに展開していきます。まるで乾燥した薬草が湯によってゆっくりとほぐれ、有効成分が湯に溶け出し、そして体が温まることで血のめぐりが促進され整っていく、という一連の入浴を追体験するかのような温浴効果が感じられるじんわり系ディープリスニング・トラック。実際に薬湯に浸かりながら聴くことでより深い体験となりそう。
Artwork/ Ririko Sano (SHISEIDO CREATIVE)