環境音楽を紹介する連載企画「花椿アンビエント」は、資生堂研究所が主導するオープンイノベーションプログラム「fibona」とのコラボレーション企画としてお送りしています。
「香り」「音楽」「歩く」「体内リズム」に続き、#7のテーマは「人工冬眠」です。
fibonaが注目する研究分野で活躍される方々と研究員が対話する新たな試みがfibonaのウェブサイトでスタートしました。その第一弾のテーマが「人工冬眠」がもたらす、睡眠とビューティの未来です。良い睡眠は健やかな生活を送る上で欠かせないものです。「人工冬眠」のような“未来の眠り”は、私たちの生活やビューティーにどのような変化をもたらすのでしょうか。そのようなことをイメージした音楽をお届けします。ぜひfibonaウェブサイトの記事とあわせてお楽しみください。
- Floating - Hideki Umezawa
Artist Comments
Hideki Umezawa
この楽曲は、2023年の冬の青森にフィールド・ワークに行った際に採取をした、氷の浮かぶ十和田湖での水中録音や、白神山地の湖や川の録音を用いています。
耳をすましてみると、流氷の軋む音や、気泡が浮かび上がってくる音。森の中の生き物たちの微かな気配など、冬の静かな環境のなかでも様々な出来事が起こっていることに気づきます。このような音をマイクを通じて聴くことによって、自然現象の複雑さや、生物の多様性など、人間中心的でない環世界的な在り方を捉えることが可能になります。
もし、人工冬眠が実現したときに、時間の感覚や意識の流れはどのようなものになるのでしょうか。
そのとき、自然や環境という言葉の持つ意味合いもまた、変わっていくのかもしれません。
Recommender/H.TAKAHASHI(Kankyō Records)
@kankyo_records
「人工冬眠」というテーマで今回楽曲を制作したのは、電子音楽家、実験音楽家で、これまで様々なインスタレーションやエキシビションのための楽曲を制作。透明感のある電子音と環境音を融合した楽曲を制作してきたHideki Umezawa。
氷塊が徐々に溶けていき、止まっていた時間が再びゆっくりと動き出すようなアトモスフェリックで美しいトラック『Floating』。本作は作者が現在取り組んでいる国際芸術センター青森での展示のためリサーチと今回のテーマの「人工冬眠」に共通項を見出したところから制作がスタートしました。冬の十和田湖の水中録音、閉山期の白神山地の湖や川の録音後半からは、浮かんでいる流氷がぶつかり合う音のフィールドレコーディング。そして自然の音と対比させる様に、バイタルを想起させるミニマルなモジュラーシンセの反復が絶妙なバランス感覚でミックスされています。体や精神、そして空間にも自然と馴染む神秘的なムードを纏ったアンビエントトラックです。
Artwork/ Ririko Sano (SHISEIDO CREATIVE)