環境音楽を紹介する連載企画「花椿アンビエント」は、資生堂研究所が主導するオープンイノベーションプログラム「fibona」とのコラボレーション企画としてお送りしています。
「香り」「音楽」「歩く」に続き、#6のテーマは「体内リズム」です。
fibonaでは、地上だけでなく宇宙においても体内リズムが肌・身体・こころに影響を与えることに注目し、体内リズムを整える新たな取り組みを外部のパートナーとともに進めています。
自分らしいリズムを見つけることは、自分らしく生きることに通じます。それは我々の日常生活だけでなく、広大な宇宙においても同様です。この視点から、心と身体が一つになり、自分にとって心地よいリズムで健やかに生きることをイメージした音楽をお届けします。
- Gravity - Tokio Ono
Artist Comments
Tokio Ono
私たちは地球上で鳴るありとあらゆる音を普段何気なく聴いていますが、宇宙には音が存在しません。私が想像出来る宇宙の音は体内にある音に近く、普段聞き慣れた音からは遠い音の存在だと考えました。人の身体に耳を当てて不思議な体内の音を聴いた事がある人は多いのではないでしょうか。心臓の鼓動やお腹の音、または耳鳴り。最も近い音の存在でありながらも同時に遠い宇宙空間の幻想を想起させます。
また私たちは急速に変化していく世界の中で、心のリズム(生活習慣、情緒、心拍数)もまた日々変化をしながら生きています。一方で音の情報で覆われた音楽の世界は二度と変化する事はなく、一定のリズムと音像はその場に残り続けます。絶対的にあり続ける音楽の不変性は目紛しく変化する生活リズムから一時的に離脱し安堵出来る音の空間となり、体内、自然界、宇宙空間を渾然一体にした音の空間はどこからでもアクセスできる環境音楽となりえます。
Recommender/H.TAKAHASHI(Kankyō Records)
@kankyo_records
昨年USのレーベル【Not Not Fun Records】からのデビュー作『Individuals』をリリースし注目を集めた東京在住のプロデューサー”Tokio Ono”による楽曲『Gravity』は、資生堂研究所が主導するオープンイノベーションプログラムfibonaがが進める取り組みのひとつに着想を得て制作されました。
宇宙、地上どちらにおいても、心身の美しさや健康状態に大きな影響を及ぼす『生活リズム/体内リズム』を整えるといったコンセプトのもと、作者が楽曲制作する上でまず最初に考えたのは、宇宙の音とはどのようなものかということでした。
地球上には空気があるため様々な音に満ちていますが、宇宙は真空のため音が存在しません。そうした時、唯一振動として人の耳に届くのは自らの体の音ということになります。心臓の鼓動やお腹の音、呼吸、または耳鳴り、このように体の発する音には一定のリズムがあり、生活リズム、体内リズムといった様々なパーソナルなリズム(情報)が内包されているでしょう。
本作では、体の音をイメージさせるポコポコとした短いループやアルペジオ、ボイスシンセによるコーラス、牧歌的なメロディーなど様々なリズムが重なることでポリリズムとなり、生命の神秘を感じる美しいサウンドスケープを作り出しています。人体にスッと馴染み、地球と宇宙どちらにいても心身のバランスが優しく整えられていく様子が思い浮かぶ、『Gravity』はそんなアンビエント作品です。
Artwork/ Ririko Sano (SHISEIDO CREATIVE)