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Now, Then!

「風呂敷」から考える、伝統文化とサステナビリティ。

2020.10.21

Photo/Takeshi Miyamoto

日本の美意識を表現した日本古来の文化であり、そしてサステナブルな生活のアイテムとして、近年注目されている風呂敷。今回、日本とフランスという二つのルーツをもち、ヨーロッパと日本の美意識を融合させたデザインで注目されるグラフィックアーティストのカンタ・デロシュさんが『繋がり』をテーマに風呂敷をデザインしました。この風呂敷は銀座の呉服店「銀座もとじ」の40周年を記念して制作されました。
 コロナ禍でより人と人のつながりが重要視されている今、カンタさんがこの風呂敷に込めた思いや、フランスと日本の文化について、お話をお伺いしました。

―今回制作された風呂敷のテーマが「繋がり」ですが、コロナ禍においてどんなことを考えましたか?

 繋がりというと、近しい人との繋がりや人間同士の繋がりを思い浮かべがちですが、そればかりではないと(最近特に)感じます。
 二つの手を対置させたこの風呂敷でも、少しずつ視野を広げていくように、三つの繋がりを表現しました。まずはグッと的をしぼった「人と人」の繋がり。ここでは家族や友人のような最小単位の繋がりから、人類愛のような人の繋がりについても考えました。次に一歩引いて見た「人と自然」との繋がり。人は自然なくして存在できない生物で、まさに自然の一部です。そして、自然との関わり合い方を根本的に考え直す時代を、私たちは今迎えています。だからこそ、歴史やさまざまな既成概念から解き放たれて、自由な自然との繋がり方を模索することができるのではないか。そんな繋がりの可能性をいくつも想像しながら描きました。そして、最後に大きくズームアウトした視点から、「自然と宇宙」との繋がりを表現しました。自然は宇宙の一部で、その意味で私たちも宇宙を構成する物質の一つとして捉えることもできます。こうして、無数の繋がりが網の目のように、何層にも重なって…それらを辿っていくと、私たちは宇宙とも密に繋がってしまう。こうしてみると、全てが「繋がり」ですね。

―風呂敷は日本古来の文化でもありますが、ご自身の生活のなかでどのように取り入れていますか?

 風呂敷文化は、相手を思いやる繊細な気持ちと細やかな心配りが形となって現れたものだと思います。公共財をどう扱うか、が問われている地球環境問題でも、他者や他の生きものを思いやりながらもセンシティブに感じ取る姿勢や、想像力が不可欠です。そういった意味でも、機能性を超えて、日本の伝統文化から世界が学べるものはたくさんあると思います。僕は風呂敷を額装したり、物を包んだり、カバンの上にフワッと乗せたり、部屋にあるものに被せたりして、その時々で変化する図柄を楽しんでいます。風呂敷の両端を結ぶと、両手が中のものを包み込むような図柄にしていて、そんな驚きもあり、陰影が強調される丹後ちりめんの素材感や、色合いも相まって、友人たちからも評判はとても良いです。

―ヨーロッパは環境問題に対して先進国ですが、パリの人々が自然に行っている行動で、日本に住む私たちが参考にできることを教えてください。

 日本の大きな街では、自然を近くに感じることが少ないです。日本は本来、窓を開ければ自然がすぐ側にある建築や文化なのに、圧迫されるような巨大な高速道路が街を横断していて、不思議に感じます。先のパリ市長選でも、環境問題が主な争点となりましたが、パリを含め、ヨーロッパの街づくりは今、緑や川との共存を中心に進められています。こうして、年々記録が更新され続ける高温をなんとか緩和しようとしています。東京でも今後こういった動きが活発になってくると良いなと思っています。
また、東京では、日常の買い物で使われるプラスチックの量に驚きます。日本でプラスチック製の買い物袋が有料化されたのはわずか3カ月前のことですが、フランスでは2016年から禁止されています。国内では規制の効果について疑問視する声もありますが、規制が環境配慮の意識に大きく働きかけることは明らかです。
 一方で、日本は目標値やその他制度的な部分で環境後進国と言われても、「自然」を重要視する日本の文化そのものへ眼を向けると、産業革命を思想として推し進めてきた欧米諸国に比べて、先進的と言わざるを得ません。こうして比較することで、お互いに学ぶべきことがたくさん挙がってくるきっかけとなるのではないでしょうか。

―フランスと日本の文化をご存じのカンタさんがこれから注目していきたい日本の文化とは?

 素晴らしい伝統工芸の技術の今後に、引き続き注目していきたいです。また、日本が明治維新で驚くほどフレキシブルに海外から様々な制度や文化を取り入れた時代、世界ではジャポニズムが注目され、その美的な感覚が取り入れられました。このような文化の交差が、グローバリゼーションが進んだ日本で、今後どういった形で進んでいくのか、とても気になります。

Kanta Desroches  カンタ・デロシュ
パリ・フランス生まれ、グラフィックアーティスト。フランスと日本を拠点に、グラフィックだけでなくブランドディレクションなど幅広く活躍する。2010年、グラフィックデザインスタジオ「LSD STUDIO」を設立。
https://lsd.studio/
@kanta_desroches

GINZA MOTOJI × Kanta Desroches
風呂敷「繋がり」
https://www.motoji.co.jp/40th-furoshiki-paris/

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