7月9日 「茫洋(ぼうよう)」
蒸し暑い空気を肌に感じながら、
未だ窓の向こうに桜色を探している。
そうやって淡い過去を懐かしんでは、意味を見出して安心した。
止まったままでいられたならそれが一番良かったと、
思う自分が情けなくて世界がみるみる滲んでいく。
写真家・鈴木親さんが撮影した、何にも揺るがず、みる私たちに静かに力を与えてくれる花と、移ろいゆく自然に思いを馳せ、逡巡しながらも日々を生きる内田紅甘さんが、ささやかに言葉を綴る連載です。7月は、愛でる間もなく散ってしまった今年の桜を思い出します。