7月2日 「留滞(りゅうたい)」
花明かりが闇夜を照らして、そこから一歩も動けずにいる。
まだ始まっていない、と思いながら、
過ぎていく年月から目を逸らす。
何を問うても桜は黙って風に吹かれるばかりで、
それなのに誰もがうっとりと見上げるのだった。
写真家・鈴木親さんが撮影した、何にも揺るがず、みる私たちに静かに力を与えてくれる花と、移ろいゆく自然に思いを馳せ、逡巡しながらも日々を生きる内田紅甘さんが、ささやかに言葉を綴る連載です。7月は、愛でる間もなく散ってしまった今年の桜を思い出します。