2020年4月のある日 「幻境」
雪と桜が同時に舞って、
ここがどこなのかわからなくなる。
春は春としてあるのではなく、私たちが共有する、
曖昧なイメージに過ぎないのだった。
日常は戻って来ないと薄々どこかで勘付きながら、
いつだって永遠なんてなかったことを思い出す。
写真家・鈴木親さんが撮影した、何にも揺るがず、みる私たちに静かに力を与えてくれる花と、移ろいゆく自然に思いを馳せ、逡巡しながらも日々を生きていく内田紅甘さんが、ささやかに言葉を綴る新連載です。