トレンド発信源、ここにあり。
パリのセリーヌのショールームを訪れて、新作を間近に、そしてつぶさに見ていつも実感する。2008年のクリエイティブ・ディレクター就任から約10年、フィービー・ファイロの尽きないアイデアには感心させられるばかり。さて、2018年春夏の注目ポイントとは?
1. キーワードは楽観主義
「楽観主義」、「センス・オブ・ジョイ(深い喜び、満足感)」、「生命力」、「プレイフル」。これらはフィービーの今のムードを彩るキーワードだ。ショーへの招待状として届いたユルゲン・テラー撮影のカレンダーがそんなムードをよく表している。一糸まとわぬ姿でほほえみ大胆に飛び上がる女性や、瑞々しく官能的な花、生命の力を炸裂させる芽……。ここのところハイファッションの世界で盛んな、Female empowerment(女性の地位向上)を肩肘張らず、しなやかに取り入れて見せた。
2. 自立したオトナの女性像
今季の女性像は、70年代後半から80年代のパリのブルジョワマダム。凱旋門から伸びるフォッシュ大通り界隈に暮らした彼女たちは、メンズライクなジャケットにミディ丈のプリーツスカートなど、フェミニンでありながら媚びのない、自立したオトナの装いが輝いていた。ジャケットの裾を片方タックインしたり、2種のプリーツによりスカートに動きを増してモダンにアップデート。最近は様々なブランドで若い世代におもねるような風潮が目立っているが、大人の女性のための自信と余裕が漂うコレクション提案は、ハイファッションブランドとしてまっとうな在り方を感じさせた。
3. アウトドアなエッセンス
ショー会場になったのは、チリ人建築家スミルハン・ラディックが手がけた有機的なフォルムの真っ白なテント。並べられたベンチには寝袋が敷かれアウトドアでコージーな演出だ。
今季のキーアイテム、コートの丸みを帯びたシルエットも、テントの形からのインスピレーション。裾が柔らかくカーブしたこの不思議なフォルムは、実は二つのアウターが裾のボタンでつながることで形作られている。上側のコートを羽織るように肩掛けしてもよいし、片方だけ羽織るなどスタイリング次第で変化が楽しめる。エレガントに仕上がったルックの数々も、実はアウトドアアイテムからヒントを得ている。
4. 小物ではレトロトレンド進行中
今季は1975年のアーカイブそのままのバッグがリバイバル。これまでもアーカイブから着想を得てモダンにアレンジしたバッグは出ていたが、当時のスタイルそのままというのは初めてのこと。シューズも敢えて履きこんだ風のビンテージ加工が施されていたり、茶×ベージュなどバイカラーな色使い、シンプルなレースアップなどレトロな印象だ。
5. 上質な無造作感が決め手
ボタンやフックできちんと留めて服の形を作り込むのが西洋の服作りの伝統だが、そこを離れ、巻く、結ぶ、垂らすなど無造作なディテールを取り入れていくのが今の気分だ。超ビッグサイズのパンツを、足部分は繋げフリンジを施し、ベルトループに通した細いレザーコードで首に引っ掛けて即席風ドレスに仕立てたり、大判のスカーフをそのままホルターネックのトップスにしたり。
正方形のスカーフに持ち手をつけただけ、といった気軽なスカーフバッグは前回のプレコレクションで発表された後、ほかのブランドでも一気に広がったが、今季はレザー使いでの提案。新しいのは、お財布を透明なビニールバッグに入れるスタイルだ。日本の大きなセール会場などでよくこのような姿を見かけるなと思ってしまったが、フィービーのインスピレーションソースは明かされず。今後様々なブランドに広がるかも?!