新型コロナウィルスの感染拡大を防ぐために、不要不急の外出をひかえている今。こんなときだから、家でゆっくり過ごすときにおすすめの作品を、日ごろ花椿に協力くださっている方々にお伺いしました。
第21回は、季刊誌『花椿』のビューティー連載で毎号寄稿をしてくださっている、作家の原田マハさんです。キュレーターとしても活躍している原田マハさんがおすすめするのは、西洋美術史の名著『美術の物語』です。
もう25年も前のこと。アートの仕事に就いていた私は、一念発起して早稲田大学の美術史科に社会人入学を果たし、そのときに本書に出会った。著名な美術史家ゴンブリッチの手ほどきで1万年以上の壮大な美術史の流れを追いかける本書は、随所に著者のアート愛が溢れ、「人間と美術は常に一緒だった」とのメッセージに胸が震える。人類は1万年もの間、どんなことがあってもアートを忘れなかった。だから何があっても大丈夫。そんな気持ちにさせてくれる。人生の宝物のような一冊である。