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Column

2020.04.22

【特別企画】今あなたにおすすめしたい、この作品。Vol.7

新型コロナウィルスの感染拡大を防ぐために、不要不急の外出をひかえている今。こんなときだから、家でゆっくり過ごすときにおすすめの作品を、日ごろ花椿に協力くださっている方々にお伺いしました。

第7回は、女子文化全般、海外カルチャーから、映画、文学までをテーマに執筆をされている、コラムニストの山崎まどかさんです。限られた空間から広がる世界と、少女小説の代表的な作品『赤毛のアン』の著者・モンゴメリが作ったスクラップブックをご紹介いただきました。物理的に制約が多い今、読んで、見て、想像力を働かせることを楽しみとするのはどうでしょうか。この2冊で試してみてください!

『HERE ヒア』リチャード・マグワイア

 「ヒア」の最初のページで描かれるのは、ソファと暖炉があるだけの、がらんとしたリビング。そこから300ページ、場所は動かない。しかし、空間に積み重なった時間のドアがアドバンス・カレンダーの小窓のように次々と開き、それぞれの時代にその家のリビングにあたる場所で何があったのかを見せてくれる。紀元前30億50万年の昔から22175年の未来まで。その間にいくつものドラマが展開し、一つの空間に豊かな物語世界が広がる。

『HERE ヒア』(リチャード・マグワイア、国書刊行会)

『赤毛のアン スクラップブック』 モンゴメリ

19世紀から20世紀にかけてアメリカやイギリスの女性たちはスクラップ・ブック作りを楽しんだ。美しいカードや雑誌から花や美女のイラストを切り抜き、詩やもらった手紙、リボン、髪の束を貼りつけた。作家モンゴメリも若い頃、スクラップ・ブックに魅せられた少女の一人だった。この本は彼女がプリンス・エドワード島で過ごした頃に作ったスクラップの抜粋。全てのページがキュート! ここに少女小説のロマンティシズムの原型がある。

『赤毛のアン スクラップブック』(モンゴメリ、河出書房新社)

山崎まどか

コラムニスト

15歳の時に帰国子女としての経験を綴った『ビバ! 私はメキシコの転校生』で文筆家としてデビュー。女子文化全般/アメリカのユース・カルチャーをテーマに様々な分野についてのコラムを執筆。著書に『オリーブ少女ライフ』(河出書房新社)『女子とニューヨーク』(メディア総合研究所)『イノセント・ガールズ』(アスペクト)共著に『ヤングアダルトU.S.A.』(DUブックス)翻訳書にレナ・ダナム『ありがちな女じゃない』(河出書房新社)、新刊に映画エッセイ集『映画の感傷』(DU BOOKS)がある。
https://www.facebook.com/romanticaugogo/