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Column

2022.12.27

【最終回】あなたと化粧品の物語 第8回

あなたと化粧品の物語、いよいよ今回が最終回となります。
最終回は芦屋さんの「物語」です。

 

 

花の女子高生、とよく言いますが、私は化粧品に無頓着で、そんな私が珍しく欲しい!と思ったものがMAQuillAGEのドラマティックルージュでした。当時発売されたばかりの限定色レディレッド、コスメコーナーで見た時、その色と艶に目を奪われたことを今でも覚えています。善は急げ、売り切れてしまう前に!と手に入れたはいいものの、前述の通り化粧っ気のない人間でしたし、色つきのリップクリームですら許されない校則であったために使う場面もありませんでした。何よりこのルージュのキレイな形のまま眺めていたい、という気持ちがあったのもあります。でも使わないともったいない。なので、私は所属している軽音楽部が予定している年明けのライブに出る時に使おうと決めました。卒業ライブは私を含めた高校3年生の最後の舞台でした、そこで私は、自分たちのバンドでメインボーカルとベースを担当します。その舞台にこのルージュがあれば何より心強いと思ったのです。その日のためにメイクアップのメの字も知らなかった私は友達や母に教えてもらいました。そして迎えた卒業ライブ当日、練習の成果もあり、口紅以外のメイクを早々に終えることができました、まっさらな唇のまま、この日のために練習にも使わなかった口紅は制服のポケットに入れたまま、舞台の袖で出番を待っていたのです。前のバンドが終わって暗転した舞台、最後のライブに震えた手で口紅を塗りました。そこからの記憶はあまりありません。あっという間に予定していた曲を終え、アンコールも終え、余韻に浸るまもなく撤収作業をしていました。帰宅した後に、友人から送られてきたメールに添付された写真の中の私は、お世辞にも上手く塗れた唇ではありませんでした。暗闇で塗ったからか、緊張で手が震えていたからか、そもそも練習不足だったか。今でも見ると少し恥ずかしい写真ですが、あのルージュにもらった勇気はずっと大切なままです。

テキスト/芦屋
写真/伊藤明日香