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Column

2016.09.16

アートブックの可能性

文/大神 崇

夏も終わりに近づき、秋の匂いが濃くなってきました。今年の夏はサッカーのユーロ(欧州選手権)、それにリオ五輪(現在パラリンピックが開催中)と大きなスポーツイベントがあり、おかげで眠れない夜が続いていたのですが、いざ終わると少し物足りない気分になっているこの頃。とはいえ、これからまた楽しいイベントが続くでしょう。ところで、秋といえば「芸術の秋」と言われますが、これは誰がつけた言葉なのでしょうか?

今週末から開催されるTHE TOKYO ART BOOK FAIRは2009年に始まったアート出版に特化した日本で初めてのブックフェアです。初年度から大きな注目を集めたフェアで、現在は国内外で活動する出版社、ギャラリー、アーティストなど約300組の出展者が参加し、来場者も年々増えています。初期の頃は、ZINEを始めとするDIYブームの火付け役になりました。また、先日書いたインディペンデントで本を作っている人にとっては、普段なかなか接することがない読者と直接話ができ、新たな出会いのきっかけになる貴重な機会でもあります。私にとってもこのブックフェアは思い入れのあるイベントで、1,2年目は関係者として、その後しばらくはお客として参加していたのですが、昨年自身のSHUKYU Magazineを創刊したのがきっかけで、現在は出展者として参加させていただいています。

年々本を取り巻く環境が変わっていく中、新たな本との関わり方を提案しているのもこのブックフェアの特徴です。今年は新たな試みとしてブックアワードを開催。グランプリ受賞者は世界最高峰のアート出版社と謳われるSteidlの協力の元、実際に本が出版できます。また、期間中はロバート・フランクにまつわるトーク新しい形の本屋に関する話など、毎日様々なゲストを招いたイベントも予定されています。

普段はあまりアートブックに馴染みがない人でも、気軽に足を運びやすいのがこのブックフェアの良い所。年々注目度が高まってきていることは、ブックフェアが一時的な流行ではなく文化として生活に根づいてきている証拠だと思います。アートの楽しみ方は人それぞれ、宝探しに出かける気分でこのフェアを楽しみましょう。

All photos / Gottingham

大神 崇

ライター/編集者

1984年大阪生まれ。フットボールカルチャーマガジン「SHUKYU Magazine」編集長。原宿のオルタナティブスペースVACANT創設メンバー。企画・編集・執筆など、カルチャーからスポーツまで、ジャンルにとらわれず幅広い活動をしている。
http://takashiogami.com/