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Column

2020.06.10

【特別企画】今あなたにおすすめしたい、この作品。Vol.28

今月に入り、徐々に日常が戻ってきました。しかしまだまだ油断は禁物、できるかぎり慎んだ行動でまわりの人たちの安全を守っていきたいこれからです。引き続き在宅で楽しめるおすすめの作品をご紹介します。

第28回は資生堂のキュレーターと花椿編集室からのレコメンドをお送りいたします。紹介するのはアート業界を支援するふたつのプロジェクト、アプリ「Artsticker」とオンラインの「2020Solidarity」です。支援にはいろいろなかたちがありますが、このふたつのプロジェクトにみえるのはアート作品を介した“感性の交歓”によって、アーティストとユーザーのお互いの生活をサポートするというかたち。デジタル伝達が基本となるアフター・コロナのこれからの生活に理想的な、アートで心通わせるコミュニケーションをご紹介します。

Artsticker

アーティストに直接作品の感想を届けることができ、サポートもできるプラットフォームアプリ「ArtSticker」。絵画や写真のようにコレクションできるもの以外に、パフォーマンスから野外や建物の中に設置されて物理的にコレクションできない作品まで、あるいはジャンルもサイズも多種多様なアートが満載です。トップにある「注目のイベント」では、展覧会のホットな情報もゲットでき、アートシーンのディテイルにまで細やかな視線が向けられた情報のセレクションにはセンスを感じます。多くの人々がそれぞれの日常生活のどこにおいても、鮮度の高い今のアートに手軽に出会い、その反応をすぐにアーティストや他のユーザーに投げかけることができます。フィジカルなアートの現場を凌いでブレイクする日は近いかも知れません。
(資生堂アートハウス 館長 伊藤 賢一朗)

金額に応じた色の「スティッカー」を好きな作品に貼ることで、アーティストを直接支援・気軽に支援できるほか、アーティストにダイレクトメッセージも送ることができます。
イベントや展覧会のチケットも思い立ったその場でオンライン購入できる嬉しい機能も。購入後、入場は指定のQRコードをかざすだけというスムースな動作も感動的です。

銀座に店舗を構える資生堂パーラーもこちらのArtStickerに参加しています。資生堂パーラーは昨年リニューアルした店舗の中で、資生堂の社名の由来である大地の徳のすばらしさを讃えた「万物資生」(『易経』より)の精神を、資生堂がこれまで資生堂ギャラリーなどでご紹介してきた現代美術作家の作品を通して表現しており、ArtSticker内では店舗内のアート作品の閲覧や各作品の解説を読むことができます。

店舗3階カフェフロア。天井に見えるのは流麻二果さんの作品『木を聴く/Voice of the Tree』。
流 麻二果『木を聴く/Voice of the Tree』油彩 1200×1200mm×4(2019年)

2020Solidarity

写真家のヴォルフガング・ティルマンスが主宰する非営利団体Between Bridgesが立ち上げたこちらの2020Solidarityは、昨今のコロナ禍で影響を受けている世界中のインディペンデント・ギャラリーやライブハウス、書店などの文化施設を支援するプロジェクト。Between Bridgesは呼びかけによって集まった50名を超えるアーティストが提供した作品のポスターを制作、それらを支援を必要とする施設へ無償で寄贈しています。

ポスターは一作家につき1作品(サイズ594 x 420mm)で金額は一律50ドル、50ポンド、50ユーロ。日本では9つの施設(以下、リンク参照)が参加をしていて、日本円は税込み6,000円での販売です。私たちユーザーが各施設の販売するポスターを購入すると、その投資がそのままそちらの施設への寄付となるというシンプルな仕組みで、愛好者の方はもちろん、アートに敷居の高さを感じていた方にも“はじめの一歩”としておすすめしたい企画です。自粛で見慣れたお部屋の風景に、アート・ポスターでフレッシュな変化をいかがでしょうか? ポスターの販売枚数に制限はありませんが、販売期間が6月30日までとのこと。施設によって取り扱い作品が異なるそうですので、バリエーションを楽しみつつ、気になる方は “ゆっくりと急げ”です!

2020Solidarity by Wolfgang Tillmans
2020Solidarity by Andreas Gursky
2020Solidarity by Thomas Ruff