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Column

2016.07.20

生活を育む

文/大神 崇

日常生活において、なにげなく私たちの身体を支えているモノたち。普段、私たちはそれらに対してどこまで意識しながら日常生活を送っているでしょうか? 身近なモノほど意外と気にしていないことは多いと思いますが、そういった部分を少し意識することで日々の生活に変化が生まれるきっかけになります。

浅草を拠点にユニークなアプローチで靴や小物など革製品を作っており、最近ではファッションブランドsacaiとのコラボレーションなど、国内外で注目度が高まっているブランド「Hender Scheme」(エンダースキーマ)。そして、1940年創業で日本の木製家具メーカーとして多くの方に知られている「カリモク家具」。この二つのブランドのコラボレーションにより、イスとサンダルの二つのプロダクトが生み出されました。昨年解体された国立競技場で使われていたイスを3組のデザイナーが新しいイスにデザインし、カリモク家具が設計・製造し販売するというユニークな企画では、私も工場を取材させていただきましたが、実はカリモク家具にとって、ファッションブランドとのコラボレーションは今回が初めてとのことです。

このコラボレーションの魅力は、革と木という両者のブランドの特徴が、それぞれのプロダクトの中でお互い主張することなく自然に融合されていることです。余白を残したミニマルなデザインでありながらも、組み立て部分など細かい所で随所に職人的な気質が表れており、高い技術を持つ両者の特徴である”メイド・イン・ジャパン”だからこそ実現した美しいプロダクトに仕上がっています。また、天然の木と革の素材を使って作られているので、使い込んでいくほど身体に馴染み、味わい深いものへと変化していく過程を楽しめることも、この二つのブランドならではの魅力ではないでしょうか?

あらゆる情報にアクセスすることが可能になり、モノが溢れ、余裕がなくなりつつある現代社会で生活していく上で、余白という考え方は日本的な美意識の一つだと思います。この余白たっぷりなアイテムと一緒に、豊かな生活を育んでみてはいかがでしょうか?

all photos: Gottingham

大神 崇

ライター/編集者

1984年大阪生まれ。フットボールカルチャーマガジン「SHUKYU Magazine」編集長。原宿のオルタナティブスペースVACANT創設メンバー。企画・編集・執筆など、カルチャーからスポーツまで、ジャンルにとらわれず幅広い活動をしている。
http://takashiogami.com/