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現代銀座考

現代銀座考 : XXV 「銀座グラフィックデザイン」ツアー 〈前篇〉

2021.05.11

写真/伊藤昊

文、イラスト/森岡督行

森岡書店代表の森岡督行さんが、銀座の過去、現在、そして未来をつなげる新しい物語です。時の人々が集い、数々のドラマが生まれた銀座には、今もその香りが漂っています。1964年頃に銀座を撮り続けていた写真家・伊藤昊さんの写真とともに、銀座の街を旅してみましょう。

 

 

1964年の東京オリンピックのロゴマークは亀倉雄策さんが手がけたが、亀倉さんは日本デザインセンター創設に参加し専務となった。

現代銀座考 : XXV 

「銀座グラフィックデザイン」ツアー 〈前篇〉

 皆さま、こんにちは。「銀座グラフィックデザイン」ツアーにご参加いただき、ありがとうございます。本日、銀座のご案内を担当させていただく、森岡書店の森岡督行でございます。今回は、「グラフィックデザイン」をテーマに、皆さまと一緒に、銀座の街を散策したいと思います。街には「グラフィックデザイン」があふれていますが、とりわけ、4人の仕事を通して、銀座のその一端を確認して参ります。4人とは、仲條正義さん(*1)と 原研哉さん(*2)、そして杉山恒太郎さん(*3)と佐藤卓さん(*4)です。新橋側から京橋側へ、中央通りを北上して参ります。しばしお付き合いのほど、何卒、よろしくお願いいたします。

 さて、皆さま、まず左手に見えて参りましたのは、銀座八丁目の資生堂パーラーです。資生堂パーラーのロゴやパッケージは、ご存じの方も多いと思いますが、仲條正義さんがデザインしております。仲條さんは、資生堂宣伝部の出身であり、企業文化誌『花椿』のアートディレクションも40年以上の長きにわたり務められました。2019年に資生堂パーラーのお菓子の一部のパッケージをリニューアルした際は、「何よりも銀座八丁目をもう一度再認識したい、資生堂すべての発祥の地であり、その原点である八丁目を強調したい」と述べています。スイーツが主役なのはもちろんですが、パッケージでより気分があがります。日本語の表記には、漢字、ひらがな、カタカナ、アルファベット、数字があり、統一感をとりにくいと思いますが、それを平面的なデザインと、発色のよい単色によって、解消しようとしているのではないでしょうか。あくまで私見ではありますが。
 銀座三丁目の松屋銀座も仲條さんがCI(コーポレートアイデンティティ)を手がけました。その一環としてつくられた“マツヤアルファベット”は後ほど見て参りましょう。

 続きまして、右手に見えて参りましたのが、GINZA SIXでございます。外壁に見える、すっきりしたGSIXの文字は、原研哉さんが手がけました。Gが金色で、SIXが黒。夜は建物の内部から文字が白く浮かび上がるように見えます。原さん率いる日本デザインセンターは、事務所も銀座四丁目にございます。GINZA SIXの中には銀座 蔦屋書店が入っておりますが、蔦屋書店のVI(ビジュアル・アイデンティティ)も制作されているんです。サインやブックカバー、ショッパー、同じ本屋の私としては羨ましいかぎりです。左手斜め前方には、銀座四丁目のMIKIMOTOのビルが見えておりますが、MIKIMOTOの静謐なロゴとパッケージのVIも原さんのお仕事です。ブランドカラーは「機前の白」。ここからは見えませんが、銀座四丁目昭和通りの歌舞伎座タワーのVIも。原さんのお仕事として筆頭にあげられるのは、なんといっても「無印良品」の各アートディレクションでしょう。銀座三丁目の「MUJI HOTEL GINZA」では、サイン計画、メインビジュアル、どのデザインにも、引いているけれど力のある佇まいが感じられます。それが原さんの信条ではないでしょうか。

 これより銀座四丁目交差点のほうに歩を進めて参ります。続きは後篇にて。ツアーはまだまだ続きます。

*1 仲條正義/1933年東京生まれ。1956年東京藝術大学美術学部図案科卒業。同年、資生堂宣伝部入社。1959年デスカ入社。1960年フリーとなり、1961年仲條デザイン事務所設立。資生堂企業文化誌『花椿』、ザ・ギンザ タクティクスデザインのアートディレクションおよびデザイン。松屋銀座、スパイラル、東京都現代美術館、細見美術館のCI計画。資生堂パーラーのロゴタイプおよびパッケージデザイン、東京銀座資生堂ビルのロゴおよびサイン計画など、グラフィックデザインを中心に活動。

*2 原研哉/1958年生まれ。日本デザインセンター代表取締役社長。2002年より無印良品のアートディレクター。そのほか松屋銀座、森ビル、蔦屋書店、GINZA SIX、MIKIMOTOなどのVIを手がける。外務省「JAPAN HOUSE」では総合プロデューサーを務めた。ウェブサイト「低空飛行」を立ち上げ、個人の視点から、高解像度な日本紹介を始め、観光分野に新たなアプローチを試みている。

*3 杉山恒太郎/1948年生まれ。立教大学卒業後、電通入社。クリエーティブディレクション局にて、クリエーティブディレクターとして活躍。主な作品に小学館「ピッカピカの一年生」、セブン‐イレブン「セブンイレブンいい気分」、サントリーローヤル「ランボー」シリーズなど。2015年より銀座に居を構えるライトパブリシティ代表取締役社長。

*4 佐藤卓/1979年東京藝術大学美術学部デザイン科卒業。1984年佐藤卓デザイン事務所設立。現 株式会社TSDO代表。「ニッカウヰスキー ピュアモルト」の商品開発から始まり、「ロッテ キシリトールガム」などのパッケージデザイン、「PLEATS PLEASE ISSEY MIYAKE」のグラフィックデザイン、また、21_21 DESIGN SIGHT館長を務めるなど多岐にわたって活動。

クリエイターの紹介

伊藤 昊

写真家

いとう・こう 1943年大阪府生まれ。生後まもなく、両親と共に父親の実家のある宮城県涌谷町に疎開。6年生のときに、京都太秦の小学校に単身で転校。1955年に東京の明治学院中学校に入学。1961年に東京綜合写真専門学校に入学。1963年に卒業後、同校の教務部に就職。この頃に写真展を2度開催する。1968年に同校を退職し、フリーのカメラマンとなる。1978年に益子に移住し、塚本製陶所の研修生となる。1981年に築窯し陶芸家として独立。その後は晩年まで陶芸家として活動する。2015年に逝去。
5月5日に写真集『GINZA TOKYO 1964』が森岡書店より刊行された。
https://soken.moriokashoten.com/items/2dabee933141

森岡 督行

店主

森岡書店主。森岡書店代表。1974年山形県生まれ。著書に『荒野の古本屋』(晶文社)、『BOOKS ON JAPAN 1931-1972』(ビー・エヌ・エヌ新社)などがある。企画協力した展覧会に「そばにいる工芸」(資生堂ギャラリー)、「畏敬と工芸」(山形ビエンナーレ)などがある。近年は洋服などのプロデュースを手がけることも多い。株式会社森岡書店代表。『工芸青花』(新潮社)のウェブサイトにて「森岡書店日記」を連載中。

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